特集

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乾燥に立ち向うもの作り

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profile 宮下 達也

アールシーエス代表。創業35年を機に代表取締役に就任。自社商品、遠赤外線パネルヒーター「夢暖望」「暖話室」を通じて、社会と家庭への貢献を目指す。3人の男の子の父親でもある。

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profile 茂田 正和

日東電化工業ヘルスケア事業部 代表。敏感肌から支持の高いスキンケアブランド「ネスノ」をはじめ、肌にやさしいエイジングケア「イホア」や美肌菌を育む美容液「オリゴロジック」などの企画/商品開発を手がける。男の子と女の子、2児の父親でもある。


2つの企業の共通点、家族の体にやさしいもの作りを。
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宮下「夢暖望」「暖話室」をご利用いただいているお客様の中には、もしかすると「ネスノ」や「オリゴロジック」といった化粧品の名前をすでに耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。今回お話を伺う茂田さんは、その開発担当であり、日東電化工業ヘルスケア事業部の統括者でもあります。茂田さん、まずは日東電化工業という会社についてご紹介いただけますか?

茂田日東電化工業は昭和34年に設立され、自動車のエンジン部品のメッキを手がけてきた会社です。設立から30年ほどは自動車部品を作り続けていましたが、将来的には電気自動車の時代がやってきますよね。そうなると部品の需要が下がることは容易に予想され、次の時代につながるビジネスを模索する必要がありました。そしてちょうどその時期、母親が交通事故にあったことによるストレスから敏感肌になってしまって。母はもともと化粧品に並々ならぬこだわりを持っており、植物由来のものなどを厳選して愛用していました。しかし、敏感肌になってからはそういった化粧品をまったく使えなくなってしまった。いわゆる化粧品ジプシーという状態となり、最終的に「これは刺激がないし、肌の状態が良くなった」と納得できたのは、驚くほどシンプルな処方の化粧品だったんです。

宮下植物成分や、最新の有効成分が入ったものなどではなかったのですね。

茂田そうなんです。その経緯を見ていた私は、「化粧品って、一体なんなのだろう?」という疑問と興味が湧いてきました。それで、父の会社である日東電化工業に入る前に、自分で化粧品の企画や開発をはじめました。そういったことを4年ほど経験したところで、会社の未来を見据え、別の産業にチャレンジしてみようという社長のビジョンと自分の立ち上げたことが合致し、2004年に日東電化工業ヘルスケア事業部がスタートしました。

宮下うちも、大手精密機器メーカーさんのインクリボン組み立て工場としてはじまった会社です。時代の流れで、大手さんは2000年あたりから中国など海外に生産拠点を移しはじめ、日本の産業が空洞化していく危機感を抱きました。会社の創業は私の父の代なので40年ほど前ですが、現在は、ほぼ暖房器の専業メーカーです。日東電化工業さんが抱いた危機感、茂田さんのお考えはすごくよくわかります。

茂田アールシーエスさんは、どういった経緯から暖房器のメーカーでやっていかれることになったのでしょうか?

宮下実際の開発に携わったのは私の父ですが、「こういったもの(暖房器)を作れないか?」という相談を持ちかけられたことが1つ。もう1つは同じ頃、うちの祖母が病気がちになり、部屋で過ごす時間が長くなった時期があったんです。祖母が家に1人で居る時に石油ストーブを使われるのはちょっと怖いな、と思いました。また、エアコンを使うと風の音が気になるとか、つけると寒いと言うのです。最初のうち、父はその「つけると寒い」という感覚がよくわからなかったそうですが、エアコンは暖まりにムラが出やすいんですよね。低い位置が冷えやすいので、ベットで横になっていると、かえって寒く感じてしまうということだったようです。それで風を出さない、お部屋の中で長時間過ごす方が使っても不快感が起きない暖房器を手がけてみようと、開発に着手したと聞いています。

厳しくなる環境、弱くなる現代人の肌にできること。
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宮下ここからは、一度じっくりお聞きしてみたかった“環境とお肌について”の話題に移りたいと思います。この数十年、紫外線量が増える一方で、湿度が下がってきているというのは、茂田さんのお話の中でも幾度となく出てきているのですが…。湿度が下がる=乾燥、ということですよね。肌の乾燥に悩むお子さんはすごく増えましたし、様々なアレルギー症状、花粉症の人も爆発的に増えています。

茂田そうですね。最近は、子供の学校行事などに参加すると、明らかに肌が弱いのだろうな、という子をたくさん見かけます。

宮下ここまで増えるというのは、環境の変化が関係しているように思うのですが。うちで毎年集めているお客さまの声から、乾燥やお肌のトラブルにまつわるキーワードがどのくらい含まれているか、調べてみました。すると、2〜3割の方が乾燥というキーワードを出されていることがわかりました。それで、私たちのつくる「空気を乾燥させない暖房器」と、肌にやさしい茂田さんの化粧品は、すごく相性が良いのではないかと感じたんです。うちの暖房器を使うようになってから、エアコンや加湿器を一切使わなくなった、というお客さまはかなりいらっしゃいます。

茂田実は“乾燥肌”という言葉が医学用語として登場してから、まだ50年くらいしか経っていないそうなんです。東北大学にいらっしゃる、乾燥肌研究の第一人者といわれている田上先生のお話によると、昔の住宅環境だった頃には乾燥肌という言葉なんて聞いたことがなかった。ところが先生がアメリカに留学したところ、向こうではドライスキンという言葉が当たり前のように使われていたそうです。というのも、アメリカではその頃もうセントラルヒーティングやエアコンが浸透していたんです。その後、日本でもエアコンが普及するにつれ、乾燥肌という言葉が使われはじめたといっても過言ではないそうです。もちろん、自然環境の変化による湿度低下の要因もありますが、家で過ごす時間はそれなりに長いので、エアコンの使用による乾燥は皮膚科学の領域では重要視されていると思います。アールシーエスさんの「乾燥させない暖房器」というのは、皮膚にとってすばらしいことだと思います。

宮下エアコンが普及するようになってから、乾燥肌というキーワードが出てきたというのは興味深いですね。地球全体の環境変化と比べた場合、エアコンの使用による住宅環境の変化というのは、肌にとってより急激な影響をもたらしたのではないかと感じています。

紫外線や乾燥で弱ってしまった現代人の肌を守りたい。
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茂田乾燥肌やお肌のトラブルという症状が増えている背景を説明する時、1つに年々増加している紫外線によって肌のバリア機能が弱ってしまっている人=敏感肌が増えてきている、というのは確かにあります。そこに、エアコン使用による湿度の低い住環境という変化も加わった。私としては、このWパンチが肌の乾燥を進行させて、乾燥による敏感肌やお肌のトラブルを発症してしまう人が一気に増えたのだと思っているんです。

宮下先日テレビを観ていたら、眼科医の先生が「外遊びをしていない子供よりも、している子供のほうが視力の良い子が多いので、1日に2時間程度は外遊びを」と推奨されていて。そうはいっても、昔より紫外線が強くなってきていることを知ると、親としては、ちょっと悩ましい感じです。

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茂田私自身、肌のことに詳しくなるまでは、子供に化粧品を使う、日焼け止めを使わせるなんて考えもしないタイプでした。子供は自然体に生きたほうがいい、と思っていましたから。子供用の化粧品をつくるにあたっても、あらためて本当に必要なのかな?と、かなり調べて勉強しました。結果、やはりこれだけ肌の弱い、アレルギーの子供が増えていて、何もしなくてもいいという時代ではないのだろうな、という結論にいたりました。参考のため、いろいろな店舗にある子供用のスキンケア商品も見ていますが、成分を目で追っていくと「なぜこの成分を使って、子供用といえてしまえるのかな?」と、愕然としてしまうものも結構ありました。

宮下子供の肌にとって、強すぎる成分も使われているのでしょうか。

茂田そうなんです。自分だったら子供には使わせたくないな、という成分が配合されているものが、思った以上にありました。私の開発アイデアは、実はそういった疑問がきっかけとなることがほとんどです。「うちの子にも日焼け止め使わせたほうがいいのだろうなあ。でも世の中に売られているものでは使わせたいものがない。ならば作るか!」という感じです。

宮下そうなんですね。美容の専門家の方と茂田さんの対談記事も読ませていただきましたが、周りの方の身近な悩みから開発の着想を得て、石けんやシャンプーなど、具体的なかたちにされていて。それを繰り返すうちに、徐々にラインナップが増えていったことがよくわかりました。

肌に存在する成分を使えば、刺激や拒絶は起こらない。
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茂田ただ私は、現代の子供にはスキンケアが必要、と考える一方で、できることなら化粧品に頼らなくても健康な皮膚が保てる環境づくりを目指すことも、企業ビジョンとして必要だと思っているんです。まずは住環境から良くすることを心がけて、必要な時は化粧品も取り入れる、この共存が成立してこそ、健康な肌を保てると思っています。

宮下茂田さんは「究極は化粧品を使う量が減っていくこと、そして化粧品に頼らなくても肌の健康を保てるのが理想」とほかの方との対談でおっしゃっていました。化粧品メーカーとしてそれを言ってしまって、大丈夫なのかな?!と心配してしまいますが(笑)実際は、環境の問題が無くなるよりも増えていくことが予想されるので、化粧品の必要性がなくなることはないですよね。ただ、そういった心意気で化粧品開発されているのがすばらしいな、と感じています。私も茂田さんとお会いしてから、日東電化さんのシャンプー、石けん、化粧水、ゲルなどを使いはじめました。自分の肌に使ってみて、やっぱりいいなと感じたので、今でも継続して使わせていただいています。自分が気に入ると、だんだん周りにも紹介したくなってくるのですが、茂田さんがつくられる化粧品をわかりやすく伝えるには、どんな表現がふさわしいのでしょうか。

茂田わかりやすい表現、とは言えないかもしれないのですが、私が手がける化粧品すべてに一貫しているのは“生体親和性”です。要は、できる限り皮膚に存在している要素でつくろう、ということなんです。オーガニックなものであれば、できる限り植物でつくろう、ですよね。ケミカルなものであれば、有効成分、薬用成分を配合してつくろう、となります。しかし多くの皮膚トラブルは、皮膚上にある成分の何かが過剰に増えたり、過剰に減ったり、といったバランスの崩れから起きています。であるならば、増え過ぎたものはちょっと減らして、減り過ぎたものはちょっと足してあげる、化粧品で正常なレベルに戻してあげれば、それだけで肌は本来の健やかなバランスに戻れるんです。私としては、皮膚に存在しないものを新たに足す必要はないと思っています。皮膚上にあるものを使えば、皮膚はそれを拒絶することはないですから。アレルギー反応、かぶれ、なども皮膚の拒絶反応のひとつといえますよね。どこか細胞レベルで歪みが起きて、拒絶反応が起こると思うので。もちろん、皮膚に存在している成分と、植物から抽出する成分がとても似ている、あるいは石油から抽出する成分であっても皮膚にある成分と非常に近い働きがある、といったことがわかればそれらの成分を使います。

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宮下成分自体で良し悪しを決めるのではなく、皮膚に対する働きを見極めて、最適な選択をその都度されているんですね。

茂田私はオーガニックコスメの開発も手がけてはいますが、医療の世界と同じ目線で考えると、人の体は必ずしもケミカルがノー、天然がイエス、ということではないんですよね。化粧品の世界では珍しい存在かもしれませんが、日東電化工業ヘルスケア事業部の化粧品に共通する、わかりやすい伝え方としては“人の皮膚にあるもので作られている化粧品”ということですね。

メーカーの思いやこだわりを、損なうことなく販売したい。
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宮下最後に販売についてのお話にも、触れておきたいと思います。うちはネットを通じてのオンライン販売を行っていますが、自分たちの力だけでは情報をお届けできるお客様が限られてしまう。そうなると、やはり卸売りさんの力を借りることになります。私たちの場合、卸先は主に通販会社さんになりますが、担当者の中にもうちの暖房器を愛用されている方がいて、いい関係性を築けるようになってきました。でも、5、6年前くらいから、やはり直にお客さまに販売する卸先も欲しいと思うようになりました。とはいえそれは、シーズンになるとたくさんの暖房器が並ぶ家電量販店ではないな、とも思ったんです。考えた結果、これまでにオンラインで購入いただいたお客様に「うちの暖房器を扱っていただけそうなお店をご紹介ください」というかたちで募集をかけ、いまでは北海道から九州まで、100店舗ほどで対面販売ができるようになりました。しかも、そのうちの半分くらいは、実際にうちの暖房器を愛用してくださっている、会社や店舗を経営しているオーナーさんだったりします。うちの商品を実際に使っていて、良さを丁寧に伝えて販売してくれるので、本当に安心して販売をお任せできるありがたい状況になりました。

茂田私もその一人ですね。本当にアールシーエスさんの暖房器のファンになったので、うちの店舗でも何台か販売させていただくことになりました。皮膚にやさしいというのもありますが、光熱費も抑えられる。省エネかつ、エコな暖の取り方がいまの時代にすごく合っていると思います。

宮下ありがとうございます。お客さまからも、自然な暖まり方という声をいただくことは非常に多いんです。暖房をつけてお部屋が暖かくなった、というよりは気づいたら寒くなくなっていた、という感じですね。これって、茂田さんのつくった化粧品を使ううちに、気づいたら丈夫できれいなお肌になっていた、というお話と通ずるものがありますよね。今回の対談は、数々の共通点をあらためて再確認し、想いを共有させていただいた時間でした。今日は貴重なお話をありがとうございました。

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